2012年9月29日 土曜日
生まれ故郷から持ち帰ったダリアの花を花瓶に活け、仏壇の脇にそっと置いたとき、写真の中の母がにこっと微笑んだように思えた。
私の生まれ故郷は、福島県の塙町という田舎だ。地図的には、茨城県に近い中央通りの山村である。町は、15年ほど前からダリアの花による町おこしを始め、今では老人会から各家庭までダリアの花作りに熱心に取り組んでいる。毎年ダリアフォトコンテストも開催され、長年にわたって私も審査に関わってきた。
メキシコが原産国であるダリアは、とても情熱的な花だ。原色の絵の具を塗りつけたような鮮やかな色彩で、大小様々な姿で太陽に向かって伸びている。見ているだけでも元気がもらえるようなチカラがある。
町から講師を依頼されたダリアの写真教室が、9月28日に実施された。町外・県外の参加者が30名近く集まり、午前はセミナーで午後はダリア園での撮影会という濃密な時間が、静かな山の中で流れた。時折雨が降る天気ゆえに一般の観光客はほとんどおらず、花には美しい水滴がまとうという恵まれた撮影条件だった。写真教室が終わって誰もいなくなった後、暫し花を見つめていると、これまで一度も東京の自宅にダリアを飾っていないことに気がついた。花が大好きだった母が、少々おかんむりであるのは間違いないだろう。園を管理しているおじさんに頼み、私はダリアの花とともに帰路に着いた。