2018年8月3日 金曜日
今年の3月13日、私にとっては衝撃的なニュースが飛び込んできた。何と、100年ぶりに(厳密には、オオシマザクラの発見から103年ぶり)自生種の桜として“クマノザクラ”に認定されたというのだ。本当に、驚いた。何しろ、園芸種の桜はおよそ600種類あるのに対して,自生種の桜はわずかに10種類(沖縄のカンヒザクラを除く学説に立つと9種類)しかない。そこに新たな桜が加わることは、予期せぬことだったからだ。
その“クマノザクラ”は、熊野川流域を中心として三重県・奈良県・和歌山県に広く分布しているという。では何故に今頃になって新種と分かったのだろうか。実は、これまでヤマザクラと思われていたものが、今回の詳しい調査の結果、あらためて新種ということが判明したのだ。その特徴は、ヤマザクラに比べて早咲きであること、花の色がピンクであること、花序柄(写真参照=数個の花がまとまっている柄の根元部分)が短いこと、葉の形が小さいこと、などという。
私は、すぐにでもこの桜に会いに向かいたかった。だが仕事が立て込んでいて、ようやく愛車で出発できたのが22日の夜だった。車中泊で迎えた翌日の朝、私は、和歌山県古座川町にあるクマノザクラの標本木(認定された個体)の桜を、胸を熱くしながら見つめていた。満開から一週間ほど過ぎていたためかなり散ってはいたが、3~4割ほどの花がまだ残っていた。クマノザクラの特徴を、じっくりとひとつずつ確認した。一般的なヤマザクラよりも、やはりピンクの色合いが目に付く。心を震わしながら、シャッターをきった。
しばらくしてから、三重県熊野市の丸山千枚田へと急いだ。標高の高いあの地域周辺ならば、クマノザクラはほぼ満開の状態と予測したからである。期待通り桜は見事に咲き誇っていたが、意外なことにカメラマンは誰一人いなかった。世紀の発見というのにどうしたことか、不思議でならなかった。おかげで私は、じっくりとクマノザクラかヤマザクラかの識別を行いながら、二日間にわたって心ゆくまでシャッターをきり続けることができた。本当にしあわせな時間であった。この喜びのお裾分けを、近いうちにみなさんに…。