2018年8月13日 月曜日
前回述べたように、“クマノザクラ”撮影が、今年の桜旅の始まりだった。それから、高知県、熊本県、香川県、福島県、新潟県、岐阜県、北海道などをめぐり、結果的に67ケ所の桜を愛でることができた。道東で桜旅最後のシャッターをきったのは、5月7日だった。
今年は、各地の開花が例年より十日前後早まるという、異常な状況だった。花見や撮影を予定していた多くの人は、たいへんな混乱に陥ったと聞いている。撮影ツアーやイベントなどは、臨機応変に変更できないのがつらいところだ。
私の場合は、是非とも会いたい桜を事前にいくつか決めてはいるものの、あとは旅しながらの出会いに任せる部分が大きい。また、長期間の撮影日程を組んでいることもあって、今年も何の問題もなく、充実した桜旅を味わうことができた。それは、“クマノザクラ”を除いたとしても、ここ10年の中で最も成果の大きい年であったと思うほどである。格別な出会いもいくつかあったが、中でも、道東の山の中で三日間にわたってひとりで見つめ続けたエゾヤマザクラは、まるで夢物語のようであった。満開になるのを願い、次には霧が出るのを願い、さらにはエゾシカが通るのを願ったところ、すべてが叶ったのである。今でも時折、その絶品を眺めては、にたりとしている自分がいる。